漢方のはなし
漢方の源流
漢方とは、どんなものでしょうか。大抵の方は、薬草を煎じて飲むのが漢方と思っておられることでしょう。これでも答えになっていますが、もう少し説明を加えてみましょう。
私たちが恩恵に預かっている近代医学は、今世紀になって発展し、特にここ50年間、日進月歩の進歩をとげました。人体のメカニズムがどんどん解明され、 そして、診断技術、外科技術の進歩、医薬品の開発など、目ざましいものがあります。このように進んだ近代医学の中にあって、今、なぜ漢方が見直されている のでしょうか。
漢方の歴史を少し述べてみましょう。
漢方の源流に向かってさかのぼると、『漢の時代』に行き着きます。漢の時代は、紀元前202年に前漢が始まり、後漢が紀元220年まで続きました。
その頃の日本は弥生時代でしたが、漢方はほとんど原型が出来ていました。源流をさかのぼると、三冊の本に出くわします。一つは、前漢に著された『黄帝内経(こうていだいきょう)』です。
これは、中国の伝説上の皇帝の名前を付けて権威付けをした本で、漢方の最も基本となる考え方や、漢方独特の人間の整理、病理、鍼灸に使う経絡についても書いてありました。
二つ目の本が、後漢に著された『傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)』です。
この本は、後の時代に、『傷寒論(しょうかんろん)』と『金匱要略(きんきようりゃく)』という二つの本に分かれて、現代に伝えられています。
日本の漢方に大きな影響を与え、漢方のバイブルとも言える本で、今でも、風邪などの急性の熱性の病気や病気がこじれて症状が変化したときは、この本に書かれた通りの処方を使っております。
三つ目の本は、後漢に著された『神農本草経(しんのうほんしょうきょう)』で、薬物の辞典です。神農は、中国で農薬、医学、商業、職人の神としてあがめ られております。神農の名前を付けて権威付けしたわけですが、この古い時代にすでに365種類の薬草が解説されていました。
ここでは皆様にあまり関係のない漢方の原点についてお話しましたが、今から2200年前に、すでに漢字のアウトラインが完成されており、古い時代からあった医学であることを理解していただけたのではないか、と思います。