漢方について

　鉄道や道路で主要な路線を、血管と同じように動脈といいますが、全国津々浦々に張り巡らされた鉄道や道路を通して、たくさんの物資が運ばれ、生活や経済が成り立っています。
　ところが、動脈である主要道路や心臓部ともいえる都心部で、長期にわたる大渋滞や通行止めが生じると、日常生活や経済に大きな打撃を与えてしまいます。
　また、主要道路で公害が発生すると、沿線住民の健康を害するばかりでなく、広範囲にわたる環境に被害が及び、自然界のサイクルにも影響を与えてしまいます。
　人間の身体も同じであり、動脈を通して、酸素や栄養が運ばれ、生命が維持されています。しかし、何らかの原因で、動脈の血液の流れが止まったり、流れが 悪くなったりしますと、病気になります。漢方医学では古代より、このような病状が発見されており、これを「瘀血」（おけつ）と言い表しています。
　瘀血は汚れた血、ドロドロした血、滞った血で、本来の働きをしていない病的な血のことを言います。現代は、こってりとした、味の濃い食べ物の取りすぎ、運動不足、ストレスが多いなど、瘀血が生じやすい環境にあります。
　現代の三大死因は、ガン、脳疾患、心臓病ですが、いずれも漢方でいう瘀血が関係しております。その他、動脈硬化症、高血圧症、高脂血症、肝臓病、通風、痔疾、婦人病、生理不順、不妊症等も瘀血と密接な関係があります。
　漢方には、古い時代から瘀血の薬や処方があり、今に伝えられています。代表的な処方に「桂枝茯苓丸」（けいしぷくりょうがん）があり、健康保険の適用にもなっており、広く使われております。
　また、最近になって、中国から入ってきた処方に「冠元顆粒」（かんげんかりゅう）があります。健康保険の適用にはなっていませんが、桂枝茯苓丸以上の効果があります。
　瘀血を治す薬草を若干紹介しましょう。桃の実の種を割ると、中にナッツのような種がありますが、これを生薬名で、「トウニン」といい、桂枝茯苓丸に含まれています。
　美しい花を咲かせる牡丹の根を掘り出し、芯を取り除いた皮を「ボタンピ」といい、同じく桂枝茯苓丸に含まれています。紅花の花にも、瘀血を治す働きがあり、冠元顆粒に含まれています。
　瘀血は、漢方の独特な、そして大変重要な理論です。これからも、しばしばお話する事があります。